ドイツの環境教育(2010)~山口和貴

地球温暖化の原因となる二酸化炭素。

くらしや経済活動でエネルギーを消費することで発生します。

地球温暖化防止に向け、私たちは身近な生活で何ができるでしょうか。


ドイツのハノーバー市には環境教育施設「生物教育センター」があります。

2010年11月のある日、ハノーバー市内のギムナジウム(大学進学を前提とした中等教育機関)の生徒30人が実習に来ていました。

実習のテーマは、再生可能エネルギーの中でも、近年注目を浴びるバイオエタノール。

原料のトウモロコシなどの植物が二酸化炭素を吸収して育つため、それを燃やしても二酸化炭素排出量がゼロとみなされます。

ガソリンなどの化石燃料よりも、地球温暖化への影響が少ないとされる燃料です。

生徒たちは5班に分かれ、トウモロコシを使って実際にエタノールを製造したり、燃焼で発生する成分を検出したりする実験などを3時間にわたって行いました。

生徒から活発な質問が飛びました。

「バイオエタノールを生産するのに、どれだけの広さのトウモロコシ畑が必要ですか」という声に、「それはとても重要な問題だね」と講師のインゴ・メンネリヒさん(59)。

「ここからハンブルクまで130キロ・メートルの距離を乗用車で往復して、だいたいこの教室分ぐらいの畑が必要だ」と計算してみせました。

実習を終えたハンネさん(15)は、「地球温暖化は事実だが、エタノールを作るのにはかなりの広さの畑が必要なこともわかった。トウモロコシは食料にもなる。世界には飢餓で苦しむ人がいることも考えなければ」と感想を話しました。

7ヘクタールの敷地を持つ教育センターでは植物園や動物飼育施設を利用して自然観察ができ、温暖化に関しては樹木の年輪を測定する実習もできます。

ドイツは再生可能エネルギー普及に力を入れ、2050年までに発電量の80%をまかなう計画です。

環境問題への先進的な取り組みは、こうした環境教育が支えています。


山口和貴

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